FROM ENTREPRENEURS

01 STORY Pepti
Dream
UTEC

“奇跡の薬”をつくる。
ペプチドリームの挑戦

ペプチドリーム株式会社
代表取締役
Kiichi Kubota
UTEC
パートナー
Maiko Katadae

PROLOGUE

自然界には、生物種特有の物質を持つ生き物が存在します。人類の歴史の中では時に、そうした天然由来の物質が「奇跡の薬」として利用され、多くの人々の命を救ってきました。 そうした物質の働きには、私の体内に存在しない「特殊アミノ酸」を合成して生み出される「特殊ペプチド」によるものが多数存在します。 バイオベンチャー・ペプチドリームは、特殊ペプチドを人工合成し、創薬に結びつけることに世界で初めて成功し、科学界、製薬業界から大きく注目されました。そして今、世界中の不治の病を治す薬の探求を続けています。 同社は2013年6月に東証マザーズへ上場。その後、2015年12月に東証1部へ変更を果たしたペプチドリームはどのようにして創業から現在に至るまで、世界を相手に、まったく新しい創薬を事業化できたのか。創業者である代表取締役社長、窪田規一氏、そして創業期からの伴走者、UTECパートナー、片田江舞子と語ります。

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SECTION01 : “奇跡の薬”をつくる夢の創薬技術、みつかる

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SECTION01

“奇跡の薬”をつくる夢の創薬技術、
みつかる

窪田:
私たちの身体を構成しているアミノ酸は「L体」と呼ばれ、全部で20種類。体内で合成されるタンパク質や「ペプチド」はどれも、このアミノ酸を利用しているため、いわば20個のレゴブロックを様々に組み合わせてつくられているようなものです。

その一方で、自然界では真菌、かび類、その他動植物が、20種類のアミノ酸以外の特殊なアミノ酸を組み込んだ特殊ペプチドをつくっている。アマゾンやチベットの奥地に生息する希少な生物から見つかる、「奇跡の薬」も、こうした特殊ペプチドであることが少なくありません。
そんな特殊ペプチドを、「アマゾンやチベットの奥地まで行かなくても、試験管の中でつくれるようにしよう」その発想が我々の技術の出発点です。

少し理科の教科書を振り返ります。私たちの身体は数十兆個の細胞から形成されています。細胞はそれぞれ、20種類のアミノ酸を“部品”にして、タンパク質やペプチドを合成する働きをしています。
それらの合成は、細胞の核に収納された遺伝子から必要な“設計情報”をコピーし、その情報をもとに細胞内の「リボソーム」と呼ばれる“タンパク質合成工場”で行われます。
このリボソームの働きをうまくコントロールすることができれば、試験管の中で任意のアミノ酸を結合したタンパク質や、ペプチドをつくりだすことができ、画期的な創薬に結びつけることができるのです。

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窪田:
細胞のタンパク質・ペプチド合成の仕組みは長らく「神様が決めたもの」、人には改変不可能なものだと考えられてきました。しかし当社の共同創業者のひとりである東京大学の菅裕明教授が生み出した「フレキシザイム技術」によって、リボソームの働きをうまく利用して、どのようなアミノ酸でも結合させることができるようになりました。たとえ特殊アミノ酸であっても、通常のアミノ酸と同じように合成をさせることができるのです。

フレキシザイム技術は、タンパク質合成工場であるリボソームを“だます”ことで、自由自在にアミノ酸を結合し、タンパク質をつくらせることができる技術なのです。
さらにペプチドリームは、特殊ペプチドの合成だけでなく、ペプチド創薬における無限の可能性をも切り拓くことにも成功しました。

窪田:
特殊ペプチドが合成できたとしても、1個や2個では話になりません。創薬のためには、非常に多様なペプチドを量産し(「ライブラリー」化)、薬として最も適切なものを選ぶ「スクリーニング・セレクション」を行う必要があります。
私たちはそうした特殊ペプチドのライブラリーをつくる技術「FITシステム」も開発し、試験管1本の中に1兆種類ものペプチドを作ることを可能にしました。
さらに数千億から兆単位の特殊ペプチドを高速・正確にスクリーニングするための技術「RAPIDディスプレイ」も開発。これらを統合することで、特殊ペプチドによる創薬プラットフォームシステム「PDPS」を作り上げました。今は世界中の製薬メーカーとアライアンスを組み、創薬へのチャレンジを進めています。

この特殊ペプチドによる創薬によって、どんなことが可能になり、私たちの生活は向上するのでしょうか?

窪田:
適切な治療薬のない全ての疾患の治療薬創出が私たちの潜在市場です。先進国での死因の第1位であり続ける多くのがん、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病に伴う合併症など、適切な治療薬のない病気の数は膨大です。我々の夢は、そうしたアンメットメディカルニーズと呼ばれる分野に一石を投じるような創薬を行うことなのです。
幸いなことに、大手製薬メーカーとアライアンスを組んでいると、彼らの狙う市場がまさにそうした、薬のない疾患の治療薬なのです。彼らのニーズと我々のやりたいことが一致しているというのは非常に幸運なことでもあります。
窪田:
細胞のタンパク質・ペプチド合成の仕組みは長らく「神様が決めたもの」、人には改変不可能なものだと考えられてきました。しかし当社の共同創業者のひとりである東京大学の菅裕明教授が生み出した「フレキシザイム技術」によって、リボソームの働きをうまく利用して、どのようなアミノ酸でも結合させることができるようになりました。たとえ特殊アミノ酸であっても、通常のアミノ酸と同じように合成をさせることができるのです。

フレキシザイム技術は、タンパク質合成工場であるリボソームを“だます”ことで、自由自在にアミノ酸を結合し、タンパク質をつくらせることができる技術なのです。
さらにペプチドリームは、特殊ペプチドの合成だけでなく、ペプチド創薬における無限の可能性をも切り拓くことにも成功しました。

窪田:
特殊ペプチドが合成できたとしても、1個や2個では話になりません。創薬のためには、非常に多様なペプチドを量産し(「ライブラリー」化)、薬として最も適切なものを選ぶ「スクリーニング・セレクション」を行う必要があります。
私たちはそうした特殊ペプチドのライブラリーをつくる技術「FITシステム」も開発し、試験管1本の中に1兆種類ものペプチドを作ることを可能にしました。
さらに数千億から兆単位の特殊ペプチドを高速・正確にスクリーニングするための技術「RAPIDディスプレイ」も開発。これらを統合することで、特殊ペプチドによる創薬プラットフォームシステム「PDPS」を作り上げました。今は世界中の製薬メーカーとアライアンスを組み、創薬へのチャレンジを進めています。

この特殊ペプチドによる創薬によって、どんなことが可能になり、私たちの生活は向上するのでしょうか?

窪田:
適切な治療薬のない全ての疾患の治療薬創出が私たちの潜在市場です。先進国での死因の第1位であり続ける多くのがん、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病に伴う合併症など、適切な治療薬のない病気の数は膨大です。我々の夢は、そうしたアンメットメディカルニーズと呼ばれる分野に一石を投じるような創薬を行うことなのです。
幸いなことに、大手製薬メーカーとアライアンスを組んでいると、彼らの狙う市場がまさにそうした、薬のない疾患の治療薬なのです。彼らのニーズと我々のやりたいことが一致しているというのは非常に幸運なことでもあります。

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PROBLEM

夢の創薬技術を実現したペプチドリーム。その夢の誕生に並走したのが、UTECの片田江舞子でした。 ペプチドリームのはじまりは、菅教授が発明したフレキシザイム技術に対する片田江の驚きでした。そして東京大学での技術移転機関(TLO)である株式会社東京大学TLOから「ベンチャーでの研究開発に向いているのではないか」と相談を受けたことから、会社化を支援することを決意します。

SECTION02 : 夢を形にする、知財戦略

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SECTION02

夢を形にする、知財戦略

片田江:
初めて菅先生の発明に触れたときは、本当に目からうろこが落ちたというか「よくこんなすごいものを作った科学者がいるな」と、ただただ感激しました。実際にフレキシザイム技術を使って薬の候補物質を生み出せていたわけではなかったのですが、「この技術を使えば必ず何かを生み出せるはずだ」と感じ、菅先生、東京大学TLOとともに会社化を目指すことになりました。
窪田さんとは2005年の秋にお会いして、経営者としてのビジネスセンスとその人柄に惚れ込み、社長候補として菅先生にご紹介しました。

そうして、2006年に窪田氏を代表取締役社長としたペプチドリームは創業します。
ペプチドリームの独自性はもちろんフレキシザイム技術。窪田氏はその独自性を100%引き出し、この世界で夢の創薬を実現するべく、巧みな知財戦略を生み出しました。これによって、ペプチドリームは、他の誰にもコピー出来ない、唯一無二の存在になったのです。
現在のペプチドリームには、フレキシザイム技術の他にも、ライブラリーをつくる独自技術、FITシステム、スクリーニングの独自技術、RAPIDディスプレイがありますが、これらは創業後に窪田氏による知財戦略とともに生み出していったものでした。

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窪田:
初期の知財はフレキシザイムだけでしたね。その後、FITシステムについても特許を取りました。しかし、薬として役立つものを選ぶためのスクリーニング技術については、他社の特許を導入しなければならないことが分かりました。
自社の技術の不足を他社の特許で補おうとする場合、理屈からすると、その企業の知財価値の評価はあっという間に半分以下に落ちます。「これではダメだ」と感じ、まずは独自のディスプレイ技術の開発に注力することにしました。

そうして2年がかりで生み出された独自技術RAPIDディスプレイによって、ペプチドリームには、特許技術が重合することによって形成される創薬プラットフォームシステムとしての価値がもたらされたのです。これらの3つの特許のうち、どれが欠けても同じことはできない。つまり、特殊ペプチドの創薬を行うためには、当社と契約をする以外に方法がない状態を、特許によってつくりあげたのです。
事実、特殊ペプチドを使い、薬の探求からスクリーニングまでを一貫して行える創薬プラットフォームシステムを持っている会社は、今も世界中で当社しか存在しません。

ペプチドリームは現在、第一三共、田辺三菱製薬などの国内大手製薬メーカーのほか、海外の大手製薬メーカーと「アライアンス・パートナー」として契約しています。ゼロスタートのベンチャーが大手と対等に渡り合って利益を出していく。まさにバイオベンチャーの理想形を実現したのも、独自技術開発と知財戦略が鍵だといいます。

窪田:
我々が起業して間もない頃から、国内外の大手製薬メーカーとの共同研究、アライアンスビジネスができているのは、もちろん確固たる独自技術の開発があったからですが、その上で知財戦略を固め、マーケットにおける自分たちの「勝ちパターン」をつくったからです。

創業時にあたる2006年頃は、製薬業界の中心は抗体薬でした。しかし、海外大手の多くは抗体薬の開発が、将来的には頭打ちになるだろうことを見込み、次に開発する薬を探す行動に出ていました。
そうした時代背景の中、私たちの論文発表などから特殊ペプチドの創薬に感心を持ったメーカーからオファーが来はじめました。
私たちはそれらのオファーに応えていった。こちらから営業をかけることは、ほとんどしませんでした。さらに契約の際には、当社から共同研究開発にかかる費用のいわば「定価表」も出し、指し値で臨む強気な戦略を展開していきました。

こうした戦略が功を奏し、ペプチドリームは第二期から継続して黒字安定傾向を続けているといいます。現在は、世界の大手製薬メーカー14社とアライアンス・パートナーとして契約しています。

窪田:
初期の知財はフレキシザイムだけでしたね。その後、FITシステムについても特許を取りました。しかし、薬として役立つものを選ぶためのスクリーニング技術については、他社の特許を導入しなければならないことが分かりました。
自社の技術の不足を他社の特許で補おうとする場合、理屈からすると、その企業の知財価値の評価はあっという間に半分以下に落ちます。「これではダメだ」と感じ、まずは独自のディスプレイ技術の開発に注力することにしました。

そうして2年がかりで生み出された独自技術RAPIDディスプレイによって、ペプチドリームには、特許技術が重合することによって形成される創薬プラットフォームシステムとしての価値がもたらされたのです。これらの3つの特許のうち、どれが欠けても同じことはできない。つまり、特殊ペプチドの創薬を行うためには、当社と契約をする以外に方法がない状態を、特許によってつくりあげたのです。
事実、特殊ペプチドを使い、薬の探求からスクリーニングまでを一貫して行える創薬プラットフォームシステムを持っている会社は、今も世界中で当社しか存在しません。

ペプチドリームは現在、第一三共、田辺三菱製薬などの国内大手製薬メーカーのほか、海外の大手製薬メーカーと「アライアンス・パートナー」として契約しています。ゼロスタートのベンチャーが大手と対等に渡り合って利益を出していく。まさにバイオベンチャーの理想形を実現したのも、独自技術開発と知財戦略が鍵だといいます。

窪田:
我々が起業して間もない頃から、国内外の大手製薬メーカーとの共同研究、アライアンスビジネスができているのは、もちろん確固たる独自技術の開発があったからですが、その上で知財戦略を固め、マーケットにおける自分たちの「勝ちパターン」をつくったからです。

創業時にあたる2006年頃は、製薬業界の中心は抗体薬でした。しかし、海外大手の多くは抗体薬の開発が、将来的には頭打ちになるだろうことを見込み、次に開発する薬を探す行動に出ていました。
そうした時代背景の中、私たちの論文発表などから特殊ペプチドの創薬に感心を持ったメーカーからオファーが来はじめました。
私たちはそれらのオファーに応えていった。こちらから営業をかけることは、ほとんどしませんでした。さらに契約の際には、当社から共同研究開発にかかる費用のいわば「定価表」も出し、指し値で臨む強気な戦略を展開していきました。

こうした戦略が功を奏し、ペプチドリームは第二期から継続して黒字安定傾向を続けているといいます。現在は、世界の大手製薬メーカー14社とアライアンス・パートナーとして契約しています。

FINAL SECTION : べンチャーキャピタリストは、夢の伴走者

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FINAL SECTION

FINAL SECTION

べンチャーキャピタリストは、夢の伴走者

窪田:
片田江さんの印象は、いわゆる“ベンチャーキャピタルの人”というよりは「この技術おもしろいね」と言って、くっついてきた女の子って感じでしたね。


片田江は、2006年にペプチドリームが誕生した時から、窪田と並走を続けていました。最初の仕事は、投資ではなく、オフィスづくり。東京大学内にあるオフィスに、研究室から廃棄された椅子などの什器を窪田と集め、掃除をし、時には使える部品を集めて椅子をつくることもあったといいます。投資に至ったのは、2008年のことです。



片田江:
フレキシザイム技術を見た時、「必ずこの技術は必ず成功する。成功させたい!」という気持ちが強く湧きました。それで投資させていただいたのですが、一緒につくった事業計画、覚えておられますか? 窪田さんと一緒に数字、売り上げ、計画を立てて……創業6~7年目で売上10億円ぐらいの計画だったんですよ。
窪田:
うーん。書類は残っているけど数字は憶えてないな(笑)。
片田江:
事業モデルの成功もまだ保証ができてない段階でした。「一件あたりこれくらいの金額でしょ、それが何件積みあがったら目標達成できるでしょうか…」と2人で相談して。なんと振り返ってみると、その数字とあまり離れてなかったんです。

ペプチドリームのビジネスモデルは、製薬企業に薬の標的となるターゲット分子の情報、つまり製薬企業にとっては通常は社外に教えないことを開示してもらう前提。技術力を実証できる前は「そんなことできるわけがない」というコメントがほとんどでした。すごく悔しい思いをしたことを憶えていますが、今となっては「みんなができないと思っていたビジネスモデルを実証できた」というのはすごく意義の大きいことだと思っています。
窪田:
片田江さんは、本当に雑巾がけから上場までを付き合ってくれました。ベンチャーキャピタリストを「お金を出してくれる人」というのではなくて「自分たちと一緒に夢を追う人間」として認識できるかどうかは、事業をつくっていく上で本当に大切なことです。
片田江さんが並走してくれる中でお互いに成長し、会社のメンバーとして仕事をしてゆけたという感覚があります。
片田江:
ベンチャーキャピタリストと起業家は、最初はテーブルの反対側にいると思うんです。でも、投資を行うプロセスの中で、隣に並ばせてもらえるかどうかを意識して私は仕事をしています。
ベンチャーキャピタリストは投資するまでは単純に「安く入りたい」「株を高く売りたい」つまり起業家とは反対の立場にいます。そこをお互いにディスカッションを繰り返していく中で、気づけば隣に並んでいる信頼関係になれるかどうかが大切なことだと思っています。
窪田:
まあ、うちの場合には最初から隣に座っていましたけどね(笑)。


ペプチドリームは、2013年6月に東証マザーズに上場しました。ペプチドリームの夢についた初値は公開価格の2500円を大きく上回る7900円。時価総額は1300億円を超えました。
窪田氏のこれからの夢は、東京オリンピックの年、2020年に第一号の医薬品を出し、さらに自社名をあしらった「PD」と刻印された薬を出すことだと言います。




窪田:
PDと刻印された薬を作りたいというのは夢ではあります。しかし、その夢の根底には、『たったひとりでもいい、病に苦しんでいる方に「ありがとう」と言ってもらえる仕事したい』という気持ちです。

今、治療薬のない疾患で苦しんでいる患者さんに薬を届ける。これがうちの第一使命ですから。