FROM SCIENTIFIC FOUNDERS

01 STORY UTEC MUJIN

世界のロボット産業の頭脳を革新する。

UTEC
パートナー
Ted Yamamoto
株式会社MUJIN
最高技術責任者(CTO)
Rosen Diankov

PROLOGUE

人工知能が世界最強の囲碁棋士を打ち負かす。美術作品の特徴を熟知した人工知能が、美術史に名を残す画家の“新作”を描く。人工知能が創作した小説が文学賞の選考を通過する――。
近年のロボット技術、人工知能の発展によって、人類社会は新たな自動化の時代に突入しています。ロボットベンチャー・MUJINが挑戦するのは、産業用ロボットを“賢くする”こと。産業用ロボットに人間のように自ら考えて動く「知能」を授けようとしています。MUJINの技術は、これからの産業用ロボットを、そして人類の労働をどのように変えようとしているのか。オープンソースのロボット動作計画ソフト「OpenRAVAE」を発明した、同社の最高技術責任者(CTO)で共同創業者のデアンコウ・ロセンと、UTECパートナー 山本哲也が語ります。

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SECTION01 : ロボットを“知的”にする、世界初の方法を確立

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SECTION01

ロボットを“知的”にする、
世界初の方法を確立

従来の産業用ロボットは、プログラミングによって教えられた動作を、忠実に再生する「ティーチング」を必要とするものでした。その作業の正確さとスピードは、ある側面において人間を遥かに凌いでいることは、現代の製造業の現場を見れば明らかです。
しかし、そうした産業用ロボットも、教えられていない動作を行うことは苦手です。つまり人間のように自分の目で見て考え、自らの行動を自律的に変えるような動作は難しく、長年、産業用ロボットの課題とされてきました。
MUJINの持つ技術のコアは、ロボットをティーチングすることなく(ティーチレス)自律的に制御する「モーションプランニング(動作計画)」にあります。産業用ロボットに現実世界を考慮する能力を与え、自律的に動作させる。まさに産業用ロボットに知性を授けようとしているのです。

ロセン:
従来の産業用ロボットは、その機能ゆえにスケーラビリティが低いのです。ロボットをティーチングし、システムを一度動かすことができれば、同じものはコピーできます。これは一見スケーラビリティがあるように見えますが、問題はシステムに何らかの変更が生じた場合です。たとえば、製造ラインのコンテナのサイズが変わってしまうなどの変更が生じた場合、プログラムも変更しなければなりません。もう一度最初から膨大な時間をかけてセットアップし直さないといけないわけです。

ロボットのティーチングは、産業用ロボットにおける悩みのひとつでした。ひとつの作業をプログラムするために膨大な時間をかけ、ロボットの関節単位の動きを調整しなければなりません。そしてその多くが、専門のオペレータによる経験測で行われてきました。

ロセン:
MUJINのロボット制御技術を使えば、このティーチングのプロセスを自動化することができます。膨大な時間をかけて手動でセットアップし直す必要はありません。これにより、産業用ロボットのスケーラビリティを飛躍的に向上させることができるのです。

MUJINの最大の強みは、ロボットの頭脳にあたるコントローラーの開発にあります。次世代知能ロボットコントローラー「MUJINコントローラー」です。世界最高品位のロボット動作計画技術、高度な並列分散処理、そして3D認識技術が組み合わされており、ロボットの機種、軸数、機械構造を選ばない、世界で唯一の汎用性を持った制御機器です。
MUJINコントローラーは、いかなるロボットであっても接続でき(※)、ティーチレスで最適な動きを自動設定することが可能な点が最大の特徴です。ロボットは自分の目で見て考え、自らの行動を自律的に変えることがでaきる人間のような知性を持つようになります。こうしたことを可能にしたのは、ロセン氏がカーネギーメロン大学の博士号取得時に開発した、ロボットの最適な動作プログラムを素早く生成する計算アルゴリズムでした。ロセン氏はカーネギーメロン大学で、画像認識技術などにおけるロボット工学の権威である金出武雄氏に師事し、東京大学JSKでのポスドクでそれらの研究の完成度をさらに高めました。
※ EthernetかEtherCATで通信できるサーボアンプを持っているすべてのロボット。

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SECTION02

人類を労働から開放する

MUJINの社名は日本語の「無人」と「無尽」から来ています。ロボットをより“知的”に、そして使いやすくすることによって、ロボットの活用範囲を広げ、製造現場における単純労働を無人化。人間をより高度な知的活動に従事する時間を拡充します。

MUJINの世界初となる、完全なティーチレスの自律動作生成を行う産業用ロボット「ピックワーカー」の動作を見れば、誰もがMUJINのビジョンを瞬時に理解できます。

ロセン:
現在私たちがフォーカスしているのは、ピッキングロボット(小さな部品・物体をつまむ作業を行うロボット)です。ピッキングは私たち人間になら誰にでもでる作業です。しかしコンピュータにピッキングの作業をプログラムするのは非常に複雑です。私は11年間、ピッキングロボットについて研究してきました。カーネギーメロン大学で優秀な学生に囲まれて学んでいる頃から、そして今も学び続けています。本当に毎週新たな発見があるのです。
ピッキング作業は小さなものです。ただ私たちは、ロボットで完璧に行う方法を見出しつつあります。この成果は世界の産業に大きな貢献をすることができるでしょう。次に目指しているのは組み立て作業を行うロボットです。ゆくゆくは製造工場のすべての自動化を目標としています。まだまだ道は長いですが、すべての始まりは小さなピッキング作業なのです。

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SECTION03

強力なビジョンの基に共同創業

MUJINは2011年に、ロセン氏とCEO(最高経営責任者)滝野一征氏によって共同創業されています。ロセン氏と滝野氏が最初に出会ったのは2009年でした。当時、ロセン氏はROS(Robot Operating System)の開発元として知られる「Willow Garage」にも所属しながら、自らも起業を考えていたと言います。
ロセン氏と滝野氏は「2009国際ロボット展(iREX 2009)」で出会い、ロセン氏は5分間会話をして「私が探し求めていたのはこの男だ」と瞬時に直感したと言います。

ロセン:
私は起業を考えていましたが、私にはセールス・マーケティングや資金調達に関するノウハウはありませんでした。それに私は世界最高のロボットを開発しなければならない。起業するためにはパートナーが必要でした。
私と出会った頃の一征は、イスラエルの世界第2位の切削工具メーカー「イスカル」の日本法人で法人営業の仕事をしていました。彼はロボットのエキスパートではありませんが、間違いなくビジネスのエキスパートでした。彼は最先端のロボットのテクノロジーとその価値を理解し、また将来MUJINの顧客となるであろう企業が何を求めているかを熟知していました。私は自分の生み出すものを安く売ってくれる人を探していたのではなく、可能な限り高い金額で売ってくれる人を探していました。高い収益が得られればそれを研究開発にまわし、さらに高いレベルの技術を生み出すことができるからです。
彼を口説き落とすには2年を要しました。そして彼は間違いなく私が探していた人でした。

そうして2011年にMUJINを共同創業したロセン氏と滝野氏は、2012年、資金調達の過程で東京大学との関係を通じUTECの山本哲也と出会います。山本もロセン氏らが語るMUJINの次世代産業用ロボットのビジョンに共有し、共にビジネスプランを練りこんで投資を行いました。

山本:
最初に会ったのは2012年の3月でしたね。当時の私は日本のロボット関連の事業機会を探しており、東京大学等での関連する要素技術をいろいろと見ていました。たとえば非常に優れたセンサー技術などです。それらは、技術面では素晴らしい性能を持っていましたが、ビジネス面でベンチャー企業としてスケールし得るものはあまりなく、この分野で良い事業構想を模索していたところ、MUJINと出会いました。MUJINの持つ動作生成技術は、次世代の産業用ロボットの知能化を担い、ソフトウェア側に付加価値がシフトしていく際のコア技術であると感じました。また、MUJINの、日本の産業用ロボット・メーカー各社と連携して産業用ロボットのアプリケーションを立ち上げようという事業構想とビジョンに共感しました。2012年当時は今のように産業用ロボットを人工知能等と組み合わせて知能化するベンチャーを構想する方は誰もいませんでした。当時、私はロボットにおける価値の源泉がソフトウェアや動作計画に移行してゆくだろうと考えていました。それこそ、UTECとしてMUJINに投資を決めた理由です。そしてその判断は間違っておらず、正しかったと今は思います。今やみな、産業用ロボットとAIを関連づけた議論をするようになっているのですから。

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FINAL SECTION

FINAL SECTION

起業とは、ゼロかイチかの世界だ

MUJINはアメリカ、中国、ウクライナなど、多様な国から人材が集まっています。マサチューセッツ工科大学(MIT)やスタンフォード大学といった国内外の大学から優秀な人材を多数、高待遇のインターン制度によって招聘。世界最先端のAIやロボティクスの頭脳が結集しています。その成果によって日産自動車、ホンダ、キヤノンなどのさまざまな大手メーカーに納品を進めてきたほか、2016年10月の日本ロボット大賞受賞、2017年9月の安倍総理訪米時のCEOミーティングでの言及など注目を集め、近い将来の株式上場も視野に入っています。

山本:
MUJINにとってピッキングロボットは始まりにすぎず、そのビジョンは30年先を見通しています。MUJINはその強力なビジョンを持って、国内外の大学や研究機関を訪問し、有名企業にも引く手あまたとすら思われる有能な人材を多数引き入れています。これは起業家として非常に重要ことです。有能な人材は、自らよりも有能なビジョナリーがいる企業にしか集まりません。
ロセン:
ありがとう。でも私は、テッド(山本)こそ、真のビジョナリーなのだと思っています。多くの投資家が、2〜3年の短期の投資回収しか考えない中で、テッドそしてUTECは私たちにチャンスを与えてくれました。私たちの企業の投資的価値、すなわち時価総額の変動のような指標だけではなく、長い目で見た社会へのインパクトを評価して投資をしてくれた。本当に心から感謝しています。
そして私たちも、いつも順調だったわけではありません。時には非常に厳しい状況だったこともあります。誰にも正しい答が分からないような状況の中ででもテッドは私たちを助けてくれ、正しい方向へと導いてくれた。
山本:
私たちUTECは現在、そのビジョンを刷新しています。そして私たちの仕事は、人類の課題に立ち向かうことだと考えるようになりました。私たちは起業家側ではないけれど、人類が立ち向かうべき課題に対し、資本、才能、知識、そしてサイエンスやテクノロジーの力を結集し、課題を解決しようとする起業家を支援したいと考えているのです。

対談の最後に、ロセン氏から起業を目指す研究者やエンジニア、プログラマーへのメッセージがありました。ロセン氏のメッセージは「起業とは、ゼロかイチかの世界だ」ということでした。

ロセン:
私は日頃よく、起業を目指している人々に会っています。彼らは非常にスマートですが、最後のステップを躊躇する。つまり、リスクを冒すところまで踏み込まないのです。私の友人に、驚くべき才能を持った、非常に優秀なロボット工学者がいます。彼は起業したいと言い続けていますが、優秀であるがゆえに、大学のポストを去ることができないでいます。彼はいつも「大学で働きながら会社を始めようと思うんだ」と話している。しかし私に言わせれば、その日は永遠に来ないでしょう。
私は、起業して世界中の人々を驚かせるようなことをしたいという野心を持ったすべての人々に言いたい。起業とはゼロかイチかの世界であって、何かと副業できるものではありません。「半分だけ」のコミットで大きな成果をあげるといった都合のいいことは存在しないのです。
一度起業すれば、起業家は、恐れることなく、その人生のすべてをその事業に捧げるべきなのです。