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13 STORY Aidemy UTEC

学生起業家出身の社長が描く、
見果てぬ夢

株式会社アイデミー 代表取締役
執行役員 社長
Akihiko Ishikawa
UTEC代表取締役社長CEO・
マネージングパートナー
Tomotaka Goji

PROLOGUE

アイデミーはAIをはじめとした先端技術を、企業や個人がいち早くビジネスの現場で使えるようにするサービスを展開しています。中心はAI/DXの内製化支援。ビジネスの変革を目指す企業に向けて、SIerの立ち位置でシステム構築やツール導入を支援するのではなく、顧客が自社でAIの活用やDXを推進していけるよう人材育成やプロジェクト伴走支援を行っています。創業者の石川氏が同社を立ち上げたのは東大在籍中のこと。そのときたまたま同じ授業に出ていたのがUTECの郷治でした。学生起業家とベンチャーキャピタリストの出会いは、アイデミーの成長をどのように加速させたのでしょうか。

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SECTION01 : 起業家としてのポテンシャルに賭けた

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SECTION01

起業家としての
ポテンシャルに賭けた

石川氏と郷治の年齢は20歳差。親子ほどに世代が離れた二人が出会ったのは、東大大学院のある授業でした。

郷治:
石川さんと初めて会ったのは2017年4月のことでした。UTECの仕事をしながらではありますが、私は、前年から東大工学系研究科博士課程に入学し、AIやデータサイエンスを専門とする研究室に所属していました。工学系研究科の修士課程の単位も取る必要があったことから、AI研究で著名な松尾豊先生の講義を受講したところ、石川さんとクラスメイトになりました。
石川:
私は学部生時代の2014年にGoodsという名前で会社を立ち上げました。休学していろいろトライしたもののうまくいかず、復学して修士課程に。次はAIを主軸にしたものをやろうと思って松尾先生主催の「Web工学とビジネスモデル」という授業を取ったら、最前列で熱心に聞いていたのが郷治さんでした。課題で同じ班になって名刺をいただいたら、UTECの社長と書いてある。「なんだ、偉い人なんだ」と(笑)
郷治:
いや、逆にすごく気を遣いましたよ。チームごとに演習の成果を発表するのですが、私はコーディングを始めてまだ日が浅く、石川さんをはじめ手が動く若いクラスメイトのみなさんが頼り。距離を縮めようと必死でした(笑)。石川さんは同じチームで、たいへんお世話になりました。その恩返しの意味もあって、事業の相談に乗るようになったんですよね。
石川:
そうですよね。その授業が終わったタイミングで社名をアイデミーに変更して、AI教育プログラム「Aidemy」をリリースしました。ちょうどUTECが240億円規模の第4号ファンドを立ち上げるときで、アイデミーには200万円投資していただきました。これは今も破られていないUTEC最小投資額記録だそうですね。
郷治:
額は小さいですが、石川さんのポテンシャルを評価したからこそ投資を決めたのです。当時、石川さんはいろいろなIT起業家の方とお付き合いをしながら、エンジェルラウンドの組成を考えていました。それに対してUTECはエンジェルではなく、投資方針も一般的なIT起業家のみなさんとは考え方が違います。にもかかわらず、石川さんは、ベンチャーキャピタリストとしての私の話に真摯に耳を傾けてくれました。この人となら伴走できる、全力で成功のために協力したいと思い、投資を決断しました。

SECTION02 : 耳にタコができるほど問われた言葉。
「テクノロジーは?」

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SECTION02

耳にタコができるほど問われた言葉。
「テクノロジーは?」

最初は個人向け教育プログラムとして始まった「Aidemy」。しかし法人向けのニーズが強いことがわかって、toBのビジネスにシフト。それを機に事業は軌道に乗りますが、成長のプロセスでUTECからはどのようなバリューアップがあったのでしょうか。

石川:
「Aidemy」を始めた当初、郷治さんからは「テクノロジーの優位性はどこ?」と耳にタコができるほどフィードバックがあり、そのおかげでテクノロジーを相当に意識しました。郷治さんから東大の先生をご紹介いただき、私たち自身も最先端の技術を吸収。それをかみ砕いて教育コンテンツに落とし込んだり、お客様との共同開発に活かせるようになりました。もちろんサービスにもテクノロジーを積極的に活用しています。最近だと、受講者の質問にAIが回答する仕組みがありますが、直接答えを返すと学習にならないので、ChatGPTを使ってうまくトスアップするシステムを開発。競合との差別化の一つになっています。

BtoBにシフトするときエンタープライズのお客様をご紹介いただけたことも大きかったです。おかげで現在は年間200~300社のお客様とご契約いただけるようになり、法人向けの売上が85%まで増えています。
郷治:
大手製造業の会長さんが東大アントレプレナープラザに来られた際に、石川さんとご一緒に挨拶したことをきっかけとしてビジネスのご縁ができたこともありましたよね。
石川:
はい。おかげさまでその後、商談が一気に進み、長くお付き合いをさせていただいています。大企業のお客様とお付き合いする中で、郷治さんの助言を聞いておいてよかったと実感していることが一つあります。投資いただいて間もなく、「取締役会をつくってガバナンスを強化しましょう」と言われて郷治さんが二人目の取締役になりました。最初に提案を受けたときには、正直、必要性がよくわかっていませんでした。しかし、小さなスタートアップが大企業のお客様に認めていただくのに、ガバナンスは避けて通れないものでした。学生起業家のノリのままだったら、きっとスケールしなかったでしょう。

NEXT

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PROBLEM

起業にはハードシングスがつきものです。アイデミーも社内人事や事業で色々な壁に直面することがありました。そのとき役立ったのがUTECの知見でした。

SECTION03 : ピンチを乗り越えて成長

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SECTION03

ピンチを乗り越えて成長

石川:
UTECからはチームアップの面でもいろいろご支援いただきました。会社を成長させるには経営人材をはじめキャリア豊富な人材の採用が不可欠でしたが、私は会社で就業した経験がなく、自分より年上で社会人として活躍している方々をどのように評価していいのかよくわからなかった。CXO級の人材を採用するときはほとんど郷治さんに面談に同席してもらってアドバイスをいただいていました。
郷治:
たまたま私の大学の後輩の名前がCOO候補として挙がったこともありましたね。彼にはいろいろな選択肢があったのですが、「フルコミットしてほしい」と話していたところ、最終的には引き受けてくれて、大変貢献してくれました。他にも、社内人事や事業で色々な壁を乗り越えてきましたよね…。
石川:
そうでしたね。そのたびに郷治さんには「こういうチャレンジはスタートアップではよくあること。みんな乗り越えてきたから大丈夫だよ」と励ましてもらって精神的にも救われたことを覚えています。

FINAL SECTION : 上場後も「気持ちはシリーズB!」

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FINAL SECTION

FINAL SECTION

上場後も「気持ちはシリーズB!」

アイデミーは人材育成支援にとどまらず、DX伴走型支援などサービスを拡大。23年6月には上場を果たします。今後はどこに向かうのか。UTECへの助言とともに語ってもらいました。

郷治:
市況の変化もあって上場は予定より1年延びましたが、株主としては「事業さえ伸びていればIPOが先になっても心配ない」という思いでした。上場してこれからアイデミーはどこに向かうのか、聞かせてもらえますか。
石川:
上場しても、シリコンバレーの水準に照らしてみた時の会社規模はシリーズB程度。上場はゴールではなく、むしろこれからが本当の勝負です。投資いただいたとき郷治さんは「テクノロジーで新しい産業をつくろう」「グローバルでインパクトを与えよう」と盛んに話していました。私たちも同じ気持ちですが、100点には到底達していません。

とくにグローバルは将来の大きなテーマの一つになるでしょう。多国籍で事業を展開しているお客様も多く、そこを入口にして世界に広げていけばいい。たとえば現在、日本ゼオン様とマテリアルズ・インフォマティクス(ビッグデータやAIなどを活用して材料開発の効率化を図る取り組み)領域での協業を行っています。化学は日本企業がプレゼンスを発揮できる産業。そこに最先端のテクノロジーをかけあわせることで、おもしろいことができるのではないでしょうか。
郷治:
楽しみですね。最後に起業家の立場からUTECにアドバイスをいただけますか。
石川:
投資してもらってわかったのは、経験の浅い学生起業家にはUTECのようにハンズオン支援するVCが合っているということでした。ガバナンス強化の意義が分かるのには時間がかかりましたが、耳の痛いことを率直に、かつ親心を持って言ってくれる存在がどれだけありがたいのか、後になるほど実感できました。学生起業家とUTECの相性は最高です。UTECには今以上に学生起業家に目を向けて投資案件を増やしてくれることを期待していますし、私自身、「学生起業家出身はダメだ」と言われないように一層頑張らなくてはいけないと考えています。