FROM ENTREPRENEURS

07 STORY 908
Devices
UTEC

いつでも、どこでも、誰でも―。
シリアル起業家が目指す
オンサイトの質量分析

908 Devices, Inc.
CEO&Co-founder
UTECパートナー Naonori Kurokawa

PROBLEM

事故現場で毒性の高いガスが発生して、救急隊員などがそれを吸ってしまったら―。従来は緊急性の高い化学分析も、専門家を擁する集中分析室内でしか実施できずに時間を要していました。しかし、「いつでも、どこでも、だれでも」、化学分析を実施できる世界をつくることに挑んでいるベンチャー企業があります。米国ボストンに本社を置く908 Devicesです。同社が開発・製造・販売する質量分析計は、独自開発した特許技術High Pressure Mass Spectrometry (HPMS TM)を活用して小型携帯化を実現。世界各地の消防所、警察所、鉱山、油田に加えバイオ医薬品製造現場など幅広い分野に普及が進んでいます。同社の成長を支えてきたUTECパートナーの黒川尚徳が、CEOのKevin J. Knopp博士に話を伺いました。

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SECTION01 : 化学分析の世界にイノベーションを

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SECTION01

化学分析の世界にイノベーションを

ベンチャーを立ち上げてエグジットさせた経験のあるKevin博士。ふたたびイノベーションを起こすために目をつけたのが、化学分析の世界でした。

黒川:
Kevin博士のバックグラウンドと、908 Devicesを共同創業した経緯を教えてください。
Kevin:
私は電気工学の博士号を取得しており、専門は光学/レーザーでした。大学院を卒業して最初に就職したのは、ドットコム・バブルの真っ只中にある会社で、その盛衰を目の当たりにしました。このような環境の変化の中に身を置いて、多くのことを学ぶことができました。

ベンチャーの世界での経験に魅了された私は、その後、Ahura Scientificという会社を共同で設立。約8年かけて事業を立ち上げて、Thermo Fisher Scientificに事業売却しました。この会社の事業が引き継がれた後、私は過去に一緒に仕事をした優秀な同僚たちと新しい会社を立ち上げたいという衝動に駆られました。

それが2012年に設立した908 Devicesです。私たちは、広範な中核技術プラットフォームを用いて、これまで中央研究所でしか利用できなかった質量分析法を現場で活用できる世界を目指しています。化学分析や生化学分析の革新です。私たちはそうした共通のビジョンを描き、衝撃的で破壊的な会社を作るための旅を新たに始めたのです。

SECTION02 : ビジョンに共鳴してくれる投資家が理想

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SECTION02

ビジョンに共鳴してくれる
投資家が理想

908 Devicesはボストンを拠点とするベンチャーです。UTECとはどのような経緯で出会ったのでしょうか。

黒川:
UTECを知ったきっかけと、日本のVCであるUTECを選んだ理由を教えてください。
Kevin:
私たちは、自分たちのビジョンに共鳴してくれる有能な投資家とシンジケートを組みたいと考えていました。そうした中で、リードVCであるARCH Venture Partnersを通じて知り合ったのがUTECでした。

黒川さんをはじめとするUTECのチームは、最初に会ったときから、私たちが技術面で追求しようとしていることや、製品を市場に投入するために必要な挑戦を根本的に理解してくれました。これには感動しましたね。技術開発中のシードステージやアーリーステージの企業にとって、基本的なことを理解してもらうことは非常に重要なことですから。
経営する中で、物事に時間がかかったり、困難にぶつかったりすることは多々あります。そのときに問題の大きさを適切に判断できる投資家がいることは重要です。UTECは、その判断ができる能力や経験を持った投資家だと思いました。

UTECは日本にあり、908 Devicesは米国の会社です。しかし、コミュニケーションには何も問題ありませんでした。UTECは慎重かつ完全な調査を行い、わずか60日で100万ドルの投資を決定してくれました。
経営する中で、物事に時間がかかったり、困難にぶつかったりすることは多々あります。そのときに問題の大きさを適切に判断できる投資家がいることは重要です。UTECは、その判断ができる能力や経験を持った投資家だと思いました。

UTECは日本にあり、908 Devicesは米国の会社です。しかし、コミュニケーションには何も問題ありませんでした。UTECは慎重かつ完全な調査を行い、わずか60日で100万ドルの投資を決定してくれました。

NEXT

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PROBLEM

全世界に、いつでも、どこでも、誰でも質量分析ができる環境を提供したい―。目指す市場はグローバルですが、自社のリソースだけでは限界がありました。

SECTION03 : UTECは日本市場開拓の重要なパートナーだった

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SECTION03

UTECは日本市場開拓の
重要なパートナーだった

908 DevicesがUTECに期待していたのは、投資家としての顔だけではありません。グローバル展開を目指す同社にとって、UTECは日本市場の水先案内人の役割も果たしてくれたといいます。

黒川:
UTECとのコラボレーションは、908 Devicesにどのように貢献したでしょうか。
Kevin:
UTECは、908 Devicesの立ち上げに貢献した最初のシリーズA以降、パートナーとしての役割を担ってくれました。UTECは、シリーズBとシリーズCの資金調達にも参加してくれました。長期に渡って会社を支え伴走してくれること―、これこそがシンジケート投資家を選ぶ際に私たちが求めていたことであり、その意味でUTECはまさに理想のパートナーでした。

また、日本市場で受けたサポートも計り知れません。日本には、多くの優れた学術機関と活力ある産業基盤があります。UTECは何年にも渡って事業連携先を開拓する手助けをしてくれました。それどころか、製品の販売までしてくれた!黒川さんをはじめとするUTECのチームには、本当に感謝しています。

日本は魅力的な市場です。なぜならば、細胞工学の産業が急成長しているからです。ノーベル賞を受賞した人工多能性幹細胞(iPS)や再生医療応用の研究は、米国だけでなく日本でも盛んに行われています。また、細胞や遺伝子の治療法や関連するモダリティの開発市場も、私たちの成長を促す重要な市場です。UTECがつないでくれた縁を大切にしながら、今後さらに日本市場にも力を入れていきたいと思います。

FINAL SECTION : Nasdaq市場への上場、これからの908 Devices

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FINAL SECTION

FINAL SECTION

Nasdaq市場への上場、
これからの908 Devices

908 Devicesは、2020年12月、米国Nasdaq市場へ新規上場を果たしました。エグジットを振り返ってもらうとともに、今後の展開について明かしてもらいました。

黒川:
エグジットはNasdaq市場への上場でした。なぜM&AではなくIPOだったのでしょうか。
Kevin:
私たちの技術プラットフォームの幅広さと、適応可能な市場の大きさを考慮すると、会社を売却するより、IPOがより良い道であると考えました。M&Aでは実現することが困難な大きな付加価値も、IPOを通してなら実現できるからです。

2020年12月、908 DevicesはNasdaqに上場を果たしました。これは私だけでなく社員一同にとって、大変誇らしいことです。さらに私たちの顧客にとっても、Nasdaqへの上場は、プロフェッショナルで献身的な企業と提携していることを証明するものになるでしょう。この上場で、エキサイティングな新製品を発表し続けるために必要なリソースへのアクセスが可能になり、顧客のミッションをサポートし続け、お客様の事業に長い間寄り添うことができると信じています。
黒川:
将来のプランを教えていただけますか。
Kevin:
ノースカロライナ大学チャペルヒル校の実験台からスタートした研究を、9年間かけて成長させて、ようやくここまで来ました。しかし、私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。当社独自のプラットフォームで実現できること、その市場可能性については、まだ表面をなぞっているに過ぎません。私たちは、機器のサイズを縮小し、分析対象物のパネルや機能を増やし、サンプルから分析結果取得までのすべての段階で、お客様の作業を容易にすることに貢献していきます。
黒川:
最後に日本の科学者や起業家に向けてメッセージをお願いします。
Kevin:
ライフサイエンスツール市場では、破壊的な可能性を秘めたエキサイティングな技術が次々と開発されています。ただ、重要なのは、潜在顧客が抱える問題に焦点を当て、自分たちの技術が課題をどのようにシームレスかつ効率的に解決できるかを考えることです。技術だけにとらわれすぎてはいけません。販売や商業活動も同様に重要であり、難しいのです。

さらにチームも重要です。908 Devicesは、幸運にもスタートから素晴らしい共同創業者、そして時間をかけて一緒にビジネスを構築してくれる信頼できるパートナーに出会いました。そのパートナーの一社がUTECでした。日本の科学者や起業家のみなさんも、チームを大切にして、ビジョンの実現に向けて頑張っていただきたいと思います。